晴天の霹靂

びっくりしました

『幼年期の終わり』~へこたれるなよ、カレルレン!

春のハヤカワ電子書籍祭でSFなどが最大半額だというので、色々読んでいるのです。

 

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前々からいずれ読もうと思っていた古典SFをこの機会に読みました。

 70年前のSFだからさすがにネタバレはいいですよね?

幼年期の終り

幼年期の終り

 

 

SFというジャンル自体がどうも読むのが苦手でなかなか頭に入らないんですが、冒頭でちょっと頑張って世界観に慣れてくると面白くなってくるもんですね

(でもたぶん読み慣れていないので、読み方が大きく間違えているとは思われる)。

 

まず、地球の上になんだかわからない巨大なUFOがのそっと現れて一向に動こうとしないから、なんだかおっかなくて人類が勝手にいい子になっていく、というのが大変面白かったです。

そのしょぼさ、いいね、人類。

見えない相手にびくびくして勝手にいい子にしてたら、50年も経ってからようやっとUFOの扉が開いて中から極めて伝統的な姿の「悪魔」が出てくる、というのも、どうやって頭に映像を思い浮かべても笑える山場。

 

そしてそれまで正体が分からないから怖がっていたのに、姿が見えたら

「なーんだ、悪魔かっ、よかった」

とばかりに一転むしろ懐いてしまうのも、やっぱりしょぼくていいね、人類。

そんな地球人となぜか共生して、オタク青年のところにせっせと通ってきてはオカルト本を片っ端から読んで勉強する悪魔型宇宙人というのも本当にかわいいです。

 

とはいえ、悪魔がわざわざ人間のところにやってきた、といえば思い出すのはミルトンの『失楽園』ではないですか。

せっかく地球人を何くれとなく助けてくれた宇宙人オーバーロードなのですから

「我々は進化の袋小路に入り込んでしまったんだよね……」

なんてしょんぼりしてる場合ではなくて、人類を引き連れて自由を求めて反乱起こそうかな、くらいのことを考えたほうが自分たちも面白いのに。

 

クラークを読んでいても、「いや、ここはミルトンで行くべきでしょう」と思ってしまうあたりが、私の脳みそがあまりSFに向いてない所以なのではあるまいかと思いつつ、その理解の想像力のギャップ自体はたいへん面白かった一冊でした。

 

まさかそっちと意思疎通が断絶して、逆にあっちとちょっとハートウォーミングな情の交流行っちゃうのっ?

という結末とか、薄ら怖くていいですね。 

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

  • 作者:ミルトン
  • 発売日: 1981/01/16
  • メディア: 文庫
 

 ミルトンのことを考えながら読んでたら「ルシファー」が出てきたので「ついに!」と思ったのだけど、単にイルカの名前でした。

なぜイルカにそんな名前?