ぜんぜん雪のない年だなと思って暮らしていれば、暦の冬が終わったとたん、いきなりじゃんじゃん雪が降る。
朝六時、NHKラジオでローカルニュースを聞いていると、釧路では豪雪で市内の除雪が間に合わず車が八台立ち往生中、などという放送。
雪国は、誰もがまず除雪のことから考えはじめて街も家も道路も設計してあるものだ。
いわく、たくさん雪が降ったらどこに捨てるのか。
どうやって効率よく通り道を確保できるか。
いかに隣近所と諍いなしに雪解けまで相互にテリトリーを維持できるか。
そんな雪かきのためにデザインしてある街でなぜ三月に車が八台も埋まるのか。
ひとえに、春の雪が重すぎるせいだろう。
私もほんの猫の額ほどの面積を雪かきしたが、道民の戦友「ママさんダンプ」に雪を積んだきり、押しても引いてもビクとも動かず、腹の底からドスの聞いた声が出るばかりで作業が一ミリも進まないには驚いた。
一番寒いさかりでもないのため車の立ち往生のせいで健康状態に問題の出る人はおらず特別悪いニュースではなかったが、関係者は大変な夜だったろう。
除雪はそれほど嫌いなわけじゃないのだから、シーズンで降雪量の辻褄を合わせるつもりなのであれば雪がふわふわのうちにせっせと降っておいてくれないと、困る。
そんなことを考えながらコーヒーを飲んでいる。
淡々と情報を伝えるさわやかな滑舌のNHKアナウンサー氏の腹がいきなりぐーっと鳴る。
「おお、この時間のキャスターさんって朝食前か」
近頃のネットで聴くラジオはやけに音がクリアで、ちょっといいスピーカーで聴いてると、案外色々聞こえる。
啓蟄でもあることだし、腹が鳴るのも春のニュースのうちであるか。