NHKの横溝正史シリーズで『犬神家の一族』を放送しておりました。
これまでも散々いろんなバージョンで見てきたので、もういいんじゃないか、などと思ってつい見逃していたのですが、ふと目に留まったのはなんと30分で作ってあるというではないですか。
30分で一族全員ちゃんと殺し終わるのか、と俄然興味が湧いて鑑賞したのです。
意外なことに『犬神家の一族』は短編に向いているのだな、と思いました。
このコンパクトさだからこそ、初心に返って楽しむことができました。
そもそも『犬神家の一族』の、最も誰とでも共有可能で最もシンプルな感想は
「なんでそんな面白い殺し方するんだよっ」
ってことだったんです。大事なことを忘れかけていたんだわ、私。
思い起こせばハナからコントなのです。
それなのに、なんか長いし、入り組んでるし、横溝正史の家父長制への怨念がふんだんに練り込まれてるから読んでるうちに勢いに呑まれてなんとなく本来のコント性を忘れるという失態を犯してしまうのですよね。
演劇仕立てでスピーディーに30分で4人も殺されると、ちゃんと笑えてきます。
演劇の、全員がぎゅーっと一か所に集まって必要なことが全部その限定空間で起こる感じって、そもそも愉快なものなのですね。
そこでどんなことが起こっていても「いやいや、人類、目も当てられなくて面白いな」っていう気持ちに、ちゃんとしてもらえる。
いつも途中でよくわからなくなる長たらしい遺言なんかも、そもそも最初からあまり深く考えようという気が起こらなくって、面白かったです。
プライムビデオで鑑賞可能な石坂浩二版。これって、『猿の惑星』に匹敵するネタバレジャケットであるように思うのだけど、こんなにネタバレ警察の厳しい現代においてもなんとなく「絵面が面白すぎるのでOK」枠に入っているのは凄い。