Netflixでオリジナルドラマ『ラスト・ツアーリ ロマノフ家の終焉』を見ました。
ロシア最後の皇帝ニコライ二世の即位から、革命によってロマノフ王朝が倒れ、一家が暗殺されるまでを描いた六話のドラマです。
私はシンプルな脳なので、凄いなあ、豪華だなあ、と感心しながら見たもんですが、どうやらこの作品はちょっとしたいわくつきだったようです。
最初に映像が出たときに、タイトルバックに使った1905年の赤の広場にレーニン廟があるが、「その時代レーニンまだ生きてるだろっ!」という致命的な総ツッコミが入って慌てて修正したらしいのです。
ひとたび出てしまった以上、歴史ドラマの信頼性としてはもう相当厳しいし、一見歴史ドキュメンタリー風の手法をわざとに使ってるだけに、一層事態が深刻なのは否めない。そんな顛末のせいか、youtubeでトレイラー動画など探しても出てこないあたりも物悲しい。
そんなわけで歴史ドラマとしてはもうちょっとどういう顔で見ていいのかわからない作品になってしまってるのですが、けっしてつまんなくはなかったのです。
だから私はあえて言いたい。ラスプーチンを愛でるドラマとしてはわりといい出来ですした。四話までしか出ないのは残念だけど。
皇帝夫婦に取り入って一家を好きに操ったシベリア育ちの謎の祈祷僧、容貌魁偉、精力絶倫。そして、死なない。刃物で刺しても、毒を飲ませても、銃で撃ってもやたらと死なないラスプーチン。
この「はた迷惑なのに殺しても死なない朗らかさ、既視感あるな」と思ったら『地獄の黙示録』のキルゴア中佐ですね。
絶対に爆弾に当たらない地獄のキルゴア中佐
内省的なキャラクターが死なないというのは悲しい物語になるもんですが、何考えてるんだかわからないが欲望が外に向かいがちな人物がやたら死なないのは、もはや『ターミネーター』として楽しめる要素がもりもり出てきますね。
ものすごく豪華絢爛な舞台設定、衣装。そこに、もともと正体がいまいちよくわからないがキャラクターがバリバリ立ってる怪僧ラスプーチン。それをどの程度真面目な時代考証を入れて、どの程度ドキュメント要素を入れ、どの程度エンタテイメント重視と考えて作ったのか判然としないドラマ仕立てで、たいへん困惑しながら見る。
それはそれで、モヤモヤを楽しめてしまうのではありました。
ラスプーチンといえば佐藤優氏の印象が妙に強いので、そのあたりのイメージのギャップでまたもう一段階おもしろくなってしまったり。