我が家の虎猫はカリカリを食べた直後に、ほとんどそのままけろっと吐いてしまうことがある。
「よしよし、気にしないでいいからゆっくり食べなさいね」
などと慰めつつ掃除をするのだが、猫というのは自分の弱みを見せることに敏感な生き物で、吐いたものを私に掃除させるのは少し気まずにする。
もともと毛玉などを吐くことで健康を保つ機能をもっている構造だから、吐くこと自体はそんなに気にしなくていいのかもしれないが、あるときネットでこんな情報を見つけたのだ。
曰く、猫がフードを吐いてしまうのは、餌の置き場所が低いせいである。猫の食道は本来は水平のものであり、頭を胃より低い位置まで下げる姿勢で食事をとってしまうと空気も一緒に飲み込んで猫が苦しい思いをしている可能性がある。
なるほどっ、と条件反射で思ったのである。
そういう仕組みだったかあ、などとひとしきり感心したあとよく考えると、胃より頭が低い体勢で食事をすると空気も飲み込んでしまうというのはどういうことなのか、あんまりよくわかっていない。重力にさからうために掃除機みたいに吸引しているってことか。違う気がする。
とはいえ、餌皿の場所を数センチあげるだけで吐かなくなるのであれば人間も猫もお互い嬉しい。試してみる価値はある。
何センチ上げるのが適切であるかという点については、ペット売り場の餌台を見に行ったりネットで調べたりしたところ、4センチくらいから15センチくらいまで、いろいろと見解の差があるようだ。ようするに、「自分ちの猫を見てできるだけ楽そうにみえる高さに調整してやりなさい」ということ。
しかしいかに親密な関係性とは言え、ガツガツとフードに食らいついてる猫を横で見て、「今楽そうかどうか」というのはなかなか難しい。どう見ても夢中になって食べてるだけである。だからゆっくり食え。
こうなったら、とりあえず少し上げて様子を見ればいいんじゃないか。
そして得意のDIYである。
我が家では二匹分の餌皿と水飲み用のボウルをまとめてトレーに載せて餌場としていた。それを家にあったキャスター台車に載せる。
我が家は不精な私が苦も無く毎日掃除できるように、華麗な足技を駆使すれば隅々まで何の障害物もなく掃除機が移動させられる仕組みを保つべく、キャスター台車が多めにあるのだ。
この台車をひとつもってきて猫餌トレーを載せてみた。これで、高さだいたい7センチ程度。ついでだから水などこぼしてしまわぬよう、それに安定のために少し重さをかける目的もかねて厚さ2センチ程度の板の板切れを載せて、そのうえに餌皿を置くようにする。これで高さ9センチ程度となった。毎朝恒例の掃除機様がお通りになるときは私の黄金の後ろ脚で瞬時の移動も可能だ。
9センチ程度の高さだと首の角度はゆるく下方を向いてはいるが、地べたで食べるよりはたしかに楽そうに見える。
さて、これでしばらく様子見であるが、本当に吐かなくなるのだとすると、なかなか画期的なことであるように思える。