ドライブとALFEEの謎 - 晴天の霹靂

だいぶ昔のことにはなるが学生の頃、時々車に乗せてもらっていた友人がいた。

面倒見がよく誰かが遠方に用事があるとなるとまめに車を出してくれる人だったのだが、そうやって世話になってる我々貧乏学生一同、口には出さないが一致した疑問があった。

彼の車に乗ると、必ずALFEEの曲が掛っているのである。

日頃の言動から察するに、むしろ高見沢さんの王子っぽい外見に「けっ！」などと言い、聞きかじるかぎりでは恋愛過多でエモーショナルに過ぎるように思われる歌詞にも「はっ！」などと嘲笑を浴びせ、「日本の歌手なんて忌野清志郎ひとりいれば十分だろっ」くらいの過激思想をいかにも持っていそうな彼なのだ。

なぜ、いつもいつも彼はALFEEの『メリー・アン』を聞き続けているのか。

当時はあまりにも意外性がありすぎてなんとなく聞きにくいと思っていたその疑問は、後年、同窓会的な飲みの席で突然明らかになる。

「あの頃ipodをつないで音楽流してたんだけど、いつの間にか曲順がアルファベット順に再生される設定になっちゃって、直し方もわからないから乗ると必ず落としたつもりもないALFEEから流れてたんだよな。ALFEE好きじゃないんだけど。」

それを聞いたときの全員の総スカンというのもなかなかのものだった。問答無用で毎回毎回『メリー・アン』ばっかり聞かせやがって。

しかしその一方で納得もした。いかにも「好きじゃないんだよなあ」と思いながら直し方がわからないというだけの理由で延々とそれを聞きつづける謎の性格は彼につかわしい。

さすが、「なぜか部屋って汚れるんだよな」などと言いながら部屋にゴミ箱というシステムが導入されてないことを指摘されるまで気付かなかった人物だけのことはある。おおらかなものだ。

月日はどんどん経ち、あの頃あんなに面映ゆいと思っていたALFEEも、「メンバー全員が65歳を超えている」という目の覚めるような情報を仕入れるに及んで一気に好感を持つようになった。

もうひとつ、のちに何かの拍子に判明してたいへんすっきりした情報がある。『メリーアン』のインスピレーションは映画『わが青春のマリアンヌ』から来てるらしいということだ。

そういうことだったのか。学生の時は朝っぱらからバルコニーで何やってんだ、あんた怖いよ、とずっと思ってたんだよメリー・アン！

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